Epstein-Barrウイルス(EBV)核抗原1(EBNA1)はすべてのEBV感染細胞に発現する唯一の潜伏感染抗原であるが、その分子構造により細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の標的にならないというのが定説であった。最近、EBNA1のCTL抗原決定基(エピトープ)が生成されることが報告され、EBNA1が細胞性免疫応答の標的として再評価された。私共は、EBNA1mRNA導入樹状細胞を用いて、健常EBV既感染者からヒト白血球抗原(HLA)-B*3501およびHLA-Cw*0303拘束性のEBNA1特異的CTLクローン(それぞれC6、B5と名付けた)を分離した。クローンB5は新規のエピトープを認識していた。末梢血中の特異的CTLの頻度を測定するため、この新規エピトープおよびC6のエピトープ(既報)を用いてMHC-テトラマーを作製した。リンパ球・ペプチド混合培養法によりCTL頻度を測定し、健常既感染者では1x10^<-5>から1x10^<-4>程度と、予想よりも頻度が高いことが示唆された。B5およびC6クローンはHLA拘束性にEBV陽性リンパ芽球用細胞株の増殖を抑制した。さらに、B5はHLA拘束性にEBNA1発現胃癌細胞株を認識し、インターフェロン-γを産生した。 一方、近年、細胞性免疫応答におけるCD4^+T細胞の重要性が注目されており、EBNA1特異的CD4^+Tクローンの分離を試みた。その結果、EBNA1蛋白全長をカバーする13merの長さの重なりを持ったペプチド群をパルスした、ドナー末梢血リンパ球を抗原提示細胞とする誘導法により、健常既感染者から5種類のEBNA1特異的CD4^+Tクローンを分離した。このうち1種類のCD4^+TクローンはDRB1^*0401、DRB1^*0403およびDRB1^*0406拘束性の新規エピトープを認識していると考えられた。
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