研究概要 |
本研究の目的は、光環境が発達早期の環境センサー遺伝子群および発達に与える影響を明らかにすることである。ヒツジ胎仔・ラット新生仔モデルを使い、光環境が視床下部視交叉上核を経由して末梢組織・器官(t単核球・副腎)に与える影響を検討した。 1.ヒツジ胎仔モデル:妊娠102日(満期147日)に麻酔下に母獣を開腹し、胎仔の腹部大動脈・上下大静脈・羊水腔内にカテーテルを留置した後、胎仔を子宮内にもどし妊娠を継続した。明暗環境(明期12時間、暗期12時間)下で飼育し、妊娠109日に胎仔頚静脈留置カテーテルより血液を採集し遠心分離法にて単核球から時計遺伝子を抽出した。rea1-time RT PCRにて時計遺伝子Perl,Per2, Bmal1,Cry1の発現を確認した。本研究にて環境センサー遺伝子の1つ時計遺伝子を指標として光環境が子宮内胎仔に与える影響を評価できるヒツジ胎仔実験モデルの作成に成功した。2.ラット新生仔モデル(ヒト早産児に相当):明暗環境下で飼育された母ラット・新生仔ラットを生後5日目の暗期より恒暗条件にて飼育し生後7日目に暗期開始4時間後に相当するCircadian time 16から30分間、新生仔に光刺激(蛍光白色光)3000ルクスを与えた。新生仔ラット副腎皮質において光刺激開始120分後にPer1遺伝子の有為な発現上昇を認めた。一方、Per2遺伝子の有為な発現上昇は認めなかった。本研究を通して1)ラット新生仔副腎が光環境の影響を受けること、2)副腎という末梢内分泌器官の発達が光環境によってプログラミングされる可能性、が示された。
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