我々は、臍帯血CD34+細胞から肥満細胞を分化誘導した経験から、ヒトES細胞から肥満細胞を分化誘導するには、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞との共培養法が有効ではないかと考えた。 ヒトES細胞をマウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養(10〜14日間)すると、CD34+多能性造血前駆細胞が分化誘導され、これらの多能性造血前駆細胞をSCF(stem cell factor)、FL(Flk2/Flt3 ligand)、IL(interleukin)-6存在下で液体培養すると、tryptaseは発現しているが、chumaseは発現していないT型肥満細胞(粘膜型肥満細胞)が産生された。 さらに、我々は、ヒトES細胞とマウス胎仔肝由来ストローマ細胞の共培養系では、共培養10〜14日目には、tryptase、chymaseのいずれも発現しているTC型肥満細胞(結合組織型肥満細胞)が存在することを見出した。これらの結合組織型肥満細胞は、SCF、FL、IL-6存在下でのマウス胎仔肝由来ストローマ細胞との共培養により、増殖し続けた。以上の結果は、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞との共培養系における、ヒトES細胞から肥満細胞への分化経路には、2種類存在することを示している。一つは、培養10〜14日目に造血前駆細胞とほぼ同時に産生される経路で、産生される肥満細胞は結合組織型肥満細胞であった。一方、多能性造血前駆細胞を介して産生される経路(培養期間は合計28〜30日)が存在し、この経路で産生される肥満細胞は粘膜型肥満細胞であった。 上記のように、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞との共培養により、ヒトES細胞から、結合組織型肥満細胞と粘膜型肥満細胞を別々に産生することが可能となった。これらのヒトES細胞から産生された肥満細胞は、有用な抗アレルギー薬の効果評価系となることが期待される。
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