神経管閉鎖異常(NTD)の遺伝素因を持つPdnマウスに葉酸やオクラトキシンA(OTA)を投与し、外脳症の発症等を観察した。妊娠7.5日にカビ毒であるオクラトキシンA(OTA)を曝露すると、Pdn/Pdnでは神経管閉鎖異常(NTD)が有意に増加したが、あらかじめ葉酸(FA)を投与するとNTDの発症率が低下した。また、マウス母体血清中のFA濃度を測定したところ、OTA曝露群では血中葉酸濃度が有意に減少したが、FA前処理しておくと血中葉酸濃度に改善が見られた。 そこで、FA投与やGli3発現量の違いが神経管閉鎖時期の胚の遺伝子発現にどのように関与し、NTD発症にどのような影響を及ぼすのかをホールマウントin situハイブリダイゼーション法(WISH)を用いて検討した。 Fgf8では、Pdn/Pdnのanterior neural ridge(ANR)で+/+と比べ背側に伸びており、Gli3はFgf8の発現を抑制していることが示唆された。OTA処理されたPdn/PdnのANRは、さらに広範囲に発現していた。FAで前処理すると、抑制されていた。OTAはGli3とFgf8の遺伝子発現カスケードに何らかの影響を及ぼしているが、FAはOTAによる影響を防御していることが示唆された。Emx2では、無処理+/+ではdosal forebrainに発現が認められ、OTA処理群ではそのシグナルが弱く、FAを投与すると改善がみられた。一方、Pdn/Pdnでは無処理でもシグナルは弱く、OTA曝露やFA前処理により変化することはなかった。これらのことから、Fgf8のANRでの発現増加とEmx2の前脳背側での発現低下がNTD誘発の一因となっている可能性が示唆された。
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