FA投与やGli3発現量の違いが神経管閉鎖時期の遺伝子発現にどのように関与するのかを、Gli3が極端に発現抑制されている遺伝性多指症/無嗅脳症マウス(Pdn/Pdn)を用いて検討してきた。転写調節遺伝子Gli3は脳形態形成過程における胚組織内の遺伝子発現ネットワークにおいて、多くの遺伝子発現に関与していると考えられるので、Pdn/Pdnの組織内でどの遺伝子に発現変動がおきているのかを網羅的に調べるため、DNAマイクロアレイ解析を行った。 形態形成期である胎生9日胚の頭部からmRNAを抽出し、野生型(+/+)とPdn/Pdnの発現パターンを約3万種類の遺伝子が搭載されているDNAチップを用いて発現解析を行い、シグナル強度を比較した。Pdn/Pdnで2倍以上発現量が高い値を示した遺伝子は425で、1/2以下の低い発現量を示したものは368であった。そのうち脳形態形成に関連のあるGli3、Emx2、Wnt8b、Wnt7b遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法により確認した。いずれも野生型と比べPdnのホモ型でも有意に減少しており、マイクロアレイの結果と一致した。 またホールマウントin situハイブリダイゼーション(WISH)法で発現領域を調べた。その結果、Pdn/PdnでWnt8b、Wnt8b、Wnt7b、Emx2の前脳での発現抑制を認めた。WntグナルやEmx2はGli3発現抑制の影響を受けていることが示唆された。 今後は、FAを投与した野生型(+/+)Pdn/Pdn、さらにOTA曝露されたサンプルでも比較を行い、データベースとして構築していく予定である。
|