研究概要 |
絨毛外トロフォブラスト(EVT)の血管内皮(EC)様分化は正常な胎盤形成に必須である.本年度はこの過程にかかわる遺伝子を明らかにすることを目的として以下の検討をおこなった。 1)ヒトEVT不死化細胞株TCL1,ヒト臍帯血管内皮細胞株HUVEC-Cにおけるmatrigel上での微小血管形成(tube formation : TF)過程の遺伝子変化をmicro-array法で検討したところ、matrigel上で3時間,6時間培養したHIF1A遺伝子発現(対0時間比)はTCL1では6.05、4.78倍、HUVEC-Cでは0.78、1.07倍であった。 2)TCL1のmatrigel上でのTF能および1%酸素濃度下でのHIF1A発現についてsiRNA導入(一過性発現,48時間)阻害剤rapamycinが与える影響をそれぞれ位相差顕微鏡(400倍),間接蛍光抗体法を用いて検討したところ、TCL1では6時間の1%酸素暴露後によりHIF1A発現が亢進したが,siRNA導入時、rapamycin添加時にはこれは認められず、matrigel上で6時間培養後に形成されたtube数(meanSD)は1視野中12.3±2.9であったがsiRNA導入時には2.3±0.6,50Mのrapamycin存在下では0であった. すなわち、matrigel上でのTF時の発現がHUVECでは亢進せずTCL1で亢進する遺伝子としてHIF1Aが抽出され、TCL1では低酸素でのHIF1A誘導およびマトリゲル上でのTFがsiRNA、rapamycinで抑制された。以上の結果から,EVTのEC様分化制御にHIF1A遺伝子が重要な役割を有することが示唆された。次年度は低酸素環境そのものによるTCL1への分化誘導について検討する。
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