研究課題/領域番号 |
18591225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
飛彈 麻里子 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (20276306)
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研究分担者 |
粟津 緑 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129315)
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キーワード | 子宮内発育不全 / 腎臓発生 / oligomeganephronia / レプチン / MAPキナーゼ / 矮小腎 / 生活習慣病 |
研究概要 |
子宮内発育遅滞(IUGR)児では、成人期に生活習慣病を発症する危険性が高いことが報告されている。特に高血圧発症原因の一つとしてIUGR児では腎のネフロン数、容積が減少することが挙げられる。レプチンおよびその受容体は胎児、胎盤に発現し、胎児発育を調節する可能性が示唆されている。またIUGR胎児のレプチン血中濃度は低く、胎児プログラミングへの関与が考えられる。そこで今年度は後腎間葉細胞へのレプチンの作用を検討した。 胎生11.5日のH-2Kb-tsAトランスジェニックマウスの後腎間葉から樹立されたMS7(vimentin陽性、cytokeratin、DBA陰性)を用いた。細胞増殖、肥大、ERK、p38活性をチミジン取り込み・細胞数、ロイシン取込み・蛋白/DNA比、ウェスタンブロットにより評価した。 レプチン1、10、50、100、500ng/mLによるチミジン取り込みはそれぞれ対照の106±3、99±2、93±3、90±2、90±4%であった(NS)。またレプチン10、100、200、500ng/mL刺激後の細胞数も対照の115±8、103±16、116±5、109±12%と変化がなかった。一方、ロイシン取り込みはレプチンにより濃度依存性に有意に増加した(レプチン1、10、50、500ng/mLにより対照の120±9、123±2、130±3、131±3%に増加)。またレプチン10ng/mLにより蛋白/DNA比は1.7倍に増加した(P<0.05)。レプチン10ng/mLにより活性化型ERK(P-ERK)、活性化型p38(P-p38)は刺激後10分には増加、30分で頂値に(それぞれ1.6倍、1.7倍)、その後漸減し24時間には前値に復帰した。レプチン刺激30分後におけるERK、p38活性化は濃度依存性であった(1、10、100、500ng/mLによりP-ERKは前値の2.3、2.3、3.3、3.4倍、p-p38は1.8、2.0、3.8、3.8倍に増加)。ERK、p38蛋白量には変化がなかった。またレプチン10ng/mLによるロイシン取り込み増加はMEK阻害薬PD98059 5μMまたはp38阻害薬SB203580 5μMにより抑制された。結論としてレプチンはERK、p38を介し後腎間葉細胞肥大を誘導することが判明し、レプチンが正常腎発生およびIUGRにおける腎容積減少に関与する可能性が示唆される。尚、この結果は一部を米国腎臓学会2006年のAnnual Meetingで発表した。また追加のデータを加えて、日本腎臓学会第50回学術総会で発表予定である。
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