研究課題
基盤研究(C)
新生仔動脈管や肺動脈に主に発現する膜電位依存性カリウムチャネル(Kv)αサブユニットはKv1.5、βサブユニットはKvβ1.2である。酸素濃度の変化をシグナルとしてKvを制御するメカニズムの研究のために、Kv1.5(膜タンパク質)とKvβ1.2(細胞質可溶性タンパク質)の相互作用、翻訳後 修飾および結合するタンパク質の検出・同定は重要である。このためヒト胎仔腎細胞(HEK293)に一過性に単独又は共発現、またKv1.5を恒常的に発現するHEK293を作製した。Kv遣伝子を導入したHEK 293におけるKv1.5およびKvβ1.2の細胞内局在を共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて観察したところ、Kv1.5は主に細胞膜上、Kvβ 1.2は細胞質に分布するが、共発現するとよく一致し主に細胞膜に局在した。Kvを含む複合体を細胞膜から抽出、精製、濃縮し、Blue native電気泳動法により巨大分子の状態で泳動分離する方法を確立した。Kv1.5複合体は630kDa、 Kvβ1.2複合体は530kDa、Kv1.5/Kvβ1.2複合体は800kDaに分離された。Kv1.5およびKvβ1.2はいずれも4量体を形成するとされるが、アミノ酸配列から算出される4量体の分子量(Kv1.5:263kDa,Kvβ1.2:182kDa)より本複合体は大きいことから、翻訳後修飾並びに相互作用するタンパク質の存在が示唆された。Kv1.5多量体は還元型SDSゲル電気泳動では分子量300〜400kDa、単量体は95kDaおよび90kDaを示した。Kv1.5にPNGase Fを用いた脱糖鎖を行ったところN-結合型グリカン修飾が示された。Kvβ1.2単量体は分子量45kDaが主であった。Kv1.5およびKvb1.2多量体の形成にはS-S結合が寄与する可能性が示された。アルキル化剤(TCEPおよびAMS)を用いた実験から、Kvβ1.2には分子内S-S結合が存在している可能性が示された。低酸素条件にした動脈管および肺動脈のグルタチオン化およびニトロチロシン化の検討を行った。抗グルタチオン抗体では差はなかったが、抗ニトロチロシン抗体の結果から、DAでは中膜の内腔側に特徴的な染色がみられ、低酸素条件のDAでやや濃かった。
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日本心臓血圧研究振興会(平成十八年度研究業績集) 21
ページ: 19-23
Annual Report of the Japan Research Promotion Society for Cardiovascular Diseases 21