研究概要 |
正常ヒト皮膚線維芽細胞において、N-methylethanolamine(MEA:phospholipase D阻害剤)は、濃度依存性にI型コラーゲンmRNAおよび蛋白の発現とCTGF mRNAの発現を抑制し、MMP-1 mRNAおよび蛋白の発現を亢進した。これらのMEAの作用はTGF-βシグナル伝達経路とは独立した経路によるものであることを示し、I型コラーゲン遺伝子発現の抑制はMEK/ERKを介したものであること、MMP-1遺伝子発現の亢進にはMEK/ERKおよびJNKによる正の制御、p38MAPKによる負の制御が関与していることを明らかにした。 よりin vivoに近い三次元培養系においても、細胞層中のハイドロキシプロリン量、培養液中の1型コラーゲン量は、いずれもMEA添加により低下していた。以上より、in vivoにおけるMEAの抗線維化作用を明らかになった。次に、in vivoにおけるMEAの抗線維化作用について検討した。はじめに予備実験としてICRマウスの背部に、0.1,1,10%MEA溶液を4週間連日塗布したところ、肉眼的、組織学的に明らかな皮膚障害は見られなかった。ブレオマイシン含有ポリ乳酸マイクロスフェーアーによる皮膚線維化モデルマウスを用いて、MEA(N-methylethanolamine)のin vivoにおける効果を検討した。皮膚線維化モデルマウスにMEA軟膏を3週間外用したところ、コントロールに比べて線維化した真皮の厚さは有意に減少した。また、I型コラーゲンおよびCTGFのmRNA発現はコントロールと比較して有意に減少し、MMP-13のmRNA発現は有意に増加していた。以上より、phospholipase D阻害剤であるMEAの外用が皮膚線維性疾患の改善に有用である可能性が示唆された。
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