炎症性皮膚疾患において、表皮細胞はさまざまなサイトカイン・ケモカインを産生することにより、リンパ球・樹状細胞などを炎症皮膚へ集積させていると考えられる。ケモカインの発現調節メカニズムを明らかにすることにより、炎症性皮膚疾患の治療に結びつく知見が得られる可能性がある。これまでに、表皮細胞はTNF_α刺激によりCTACK/CCL27の産生は蛋白レベル、RNAレベルで誘導され、IFN_γによりその誘導が抑制されることを明らかにした。今回IFN_γによる誘導抑制は、表皮細胞の分化に依存していることを明らかにした。すなわち、培養液中のカルシウム濃度を上昇させる、あるいは細胞密度を高くすることにより分化度を上げた表皮細胞においてはIFN_γによる誘導抑制が消失した。またIFN_γによる誘導抑制はEGF受容体依存的であり、EGF受容体のチロシン燐酸化阻害剤の添加によりIFN_γによる誘導抑制は解除された。培養表皮細胞において、IFN_γはおそらく培養上清中のEGF受容体リガンドと共同的に働き、TNF_α刺激によるCTACK/CCL27産生抑制に働いていると考えられる。表皮細胞の分化にともない、EGF受容体リガンドの産生は弱まり、IFN_γの作用も消失するものと推測された。 活性型ビタミンD3は今日炎症性皮膚疾患の一つである乾癬の治療薬として広く使用されている。その作用メカニズムの一端を明らかにするため、表皮細胞からのケモカイン産生に対する活性型ビタミンD3の作用を検討した。活性型ビタミンD3はTNF_αにより刺激された表皮細胞からのTARC/CCL17、MIP3α/CCL20、IP-10/CXCL10、I-TAC/CXCL11の産生を濃度依存的に抑制し、これはRNAレベルでも確認された。CTACK/CCL27に関しては産生を増強することが確認された。乾癬において、MIP3a/CCL20の受容体であるCCR6を発現するTh17細胞の重要性が明らかであり、また乾癬表皮内へ浸潤するリンパ球の多くがIP-10/CXCL10、I-TAC/CXCL11の受容体であるCXCR3を発現していることが報告されている。 これらのケモカイン産生を抑制することが、活性型ビタミンD3の乾癬に対する有効性の一つのメカニズムである可能性が示唆された。
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