研究概要 |
前年度の研究で,強皮症の遺伝的なモデルマウスであるtight skin mouse(TSKマウス)に,B細胞を除去可能な抗CD20抗体を新生児期より投与した場合には,皮膚硬化の進行が43%まで抑制され,自己抗体の産生がみられなくなることが明らかとなった。 本年度はその機序について検討した。TSKマウスの病変部の皮膚にB細胞が浸潤してるか,また抗CD20抗体治療によりそれらのB細胞が消失するかどうかを免疫組織学的およびreal-time PCRにて測定した。しかしながら,TSKマウスでは抗体治療の有無に関わらず,B細胞の浸潤がほとんど検出されなかった。 次に皮膚病変部での各種サイトカインの発現をrea1-time PCRにて測定した。TSKマウスでは野生型マウスに比べて,IL-4,IL-6,IL-10などの線維化を促進するTh2サイトカインの発現が増加しており,逆にIL-2,TNF-alpha,IFN-gammaなどの線維化を抑制するTh1サイトカインの発現が減少していた。また,線維化に中心的な役割を示すTGF-betaの発現は増加していた。しかしながら,抗CD20抗体の投与により,これらのサイトカインの発現異常が野生型レベルまで是正される傾向がみられた。これらのサイトカインは,B細胞から産生されるものもみられるが,主にT細胞やマクロファージから産生されることから,TSKマウスにみられるB細胞異常や抗CD20抗体によるB細胞除去が,T細胞やマクロファージなどの他の細胞との相互作用を介して,皮膚の線維化に影響した可能性が考えられた。 以上の結果から,TSKマウスの皮膚硬化の出現には何らかのB細胞機能異常が関与してし}ると考えられ,抗CD20抗体治療は皮膚のサイトカインの発現を制御することにより,皮膚硬化の進行を抑制することが明らかとなった。
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