研究概要 |
我々は形質細胞増殖因子β(TGF-β)と結合組織増殖因子(CTGF)という2つのサイトカインを新生マウス皮下に注入することによって確立した皮膚線維化モデルマウスにおける,抗CTGFマウスモノクロナル抗体による線維化の抑制を試みた。ヒトCTGFDNAを組み込んだベクターとジーンガンにてマウスに免疫するDNA免疫法により,CTGFmodule1〜4に対するモノクロナル抗体,17株の樹立に成功した。今年度は更に中和効率の高いモノクロナル抗体のスクリーニングに重点を置いた。これら17株の抗CTGF中和活性についてスクリーニングを重ねたところ,抗CTGFmodule2に対する抗体の中和活性が最も強力であることが皮膚線維化モデルマウスにおいて示された。 同抗体は,皮膚線維化モデルマウスに対して注入される前半のTGF-β及び後半のCTGFのいずれにおいても線維化を著明に抑制した。特に前半のTGF-β注入期においては,産生されたコラーゲンの蛋白量の50%,RT-PCRにおけるm-RNAの70%の抑制が得られた。以上のことは我々が得た抗ヒトCTGFモノクロナル抗体は,マウスの内因性のCTGFの活性をも抑制したことを意味する。 今後は,皮膚以外においても,肝硬変モデル,腎硬化症モデル,肺線維症モデルなど他の線維化疾患の動物モデルにおいても,抗ヒトCTGFモノクロナル抗体の線維化抑制効果を検討するとともに,マウス抗ヒトCTGFモノクロナル抗体をヒト化し,各種ヒト線維化疾患,特に強皮症に対する新規治療薬確立への臨床応用の基盤を展開させたい。
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