平成19年度の主な成果は以下のとおりである。 1.培養ヒト正常表皮角化細胞(NHK)にREIC/Dkk-3を発現するアデノウイルスベクター(Ad-REIC)を感染することにより発現が変化する遺伝子のスクリーニングにより、免疫機能の調節に重要な役割を果たすあるサイトカインの発現が誘導されることが分かった(発表準備中のため明記せず)。このサイトカイン誘導により個体の免疫機能の亢進することが認められ、REIC/Dkk-3が生体での防護機構に関与する可能性が示唆された。 2.Ad-REICの感染により誘導される腫瘍特異的アポトーシスは前立腺がん、腎臓がんなどで観察されるが、膀胱がんなどではアポトーシスが誘導されない。この機構を探るため、Ad-REICに感受性がある前立腺がん細胞株PC3に低濃度でAd-REICを感染させながら長期間培養し、耐性細胞を得た。さらにクローニングすることによって様々な感受性(耐性)のAd-REIC感受性/耐性クローン株を複数得ることが出来た。この細胞を用いてPC3親株と比較するためマイクロアレイによる発現解析を行ったが、結果は現在解析中である。また耐性の鍵となるシグナル伝達経路を同定し、詳細な解析を行った(発表準備中のため明記せず)。 3.前年度に開発した方法によりヒト正常線維芽細胞からREIC/Dkk-3タンパク質を培養実験に使用できる純度で精製した。このタンパク質を培養上清に添加する方法は、アデノウィルスベクターによる強制発現システムと比較して生理的な部分が多いと考えられる。培養細胞に精製REIC/Dkk-3タンパク質を添加して、Ad-REICとの比較を行っている。 4.REIC/Dkk-3のノックアウトマウスを作成中である。当該遺伝子をノックアウトしたマウスES細胞を既に得て、現在個体を作成中である。 以上の成果については、現在複数の発表論文を準備中である。
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