ロリクリンは表皮角層細胞のコーニファイドセルエンベロープ(cornified cellenvelope : CE)の主成分であり、表皮細胞のバリア機構の維持に重要な役割を果たしている。近年のロリクリン研究の進展は目覚ましくそのひとつは、ロリクリン遺伝子の構造が解明され、ロリクリン蛋白がCEを形成する過程が分子レベルで理解できるようになったことである。またロリクリン遺伝子の変異による疾患も明らかにされ現在ではロリクリン角皮症と総称されている。ロリクリン角皮症ではロリクリン遺伝子の翻訳領域にグアニンまたはシトシンが挿入され、これらの領域より下流のアミノ酸はコドンの読み枠がずれて、正常とは異なったアミノ酸が付加されている。しかしながらロリクリン角皮症の疾患概念が確立したものの、解決すべき課題は多々残されている。例えばロリクリン角皮症の患者では、手足の指趾の絞扼輪がしばしば見られるが何故生じるかに関しては全く分かっていない。また、ロリクリン角皮症の病変皮膚では、光学顕微鏡で観察すると、顕著な錯角化が見られ、免疫電子顕微鏡で観察すると、核小体に異常ロリクリンの凝集塊が見られるがこれらの点についても現時点では(原因)全く不明である。これらの未解決の難問に対して回答を与えることを目的とした。
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