(1)培養ヒト皮膚由来リンパ管内皮細胞遊走能の検討 ヒト皮膚由来リンパ管内皮細胞に種々の濃度のヒト組み換えVEGF-AまたはVEGF-Cを添加し、その細胞遊走能をboyden chamber assayを用いて検討、至適濃度を決定した。至適濃度:VEGF-A、33ng/ml;VEGF-C、500ng/ml. (2)ヒト皮膚由来リンパ管内皮細胞の遊走におけるシグナル伝達経路の検討 1.至適濃度のVEGF-Aを添加し、経時的にリンパ管内皮細胞から蛋白質を抽出、その後、リン酸化STAT3に対する特異抗体を用いて、リン酸化STAT3の細胞内局在を細胞染色及びWestern blot法を用いて検討した。この結果、VEGF-A刺激以前、リン酸化STAT3は既に細胞質に存在することが明らかとなった。さらにVEGF-A刺激こより、60分をピークにリン酸化STAT3は核内移行することが明らかとなった。 2.VEGF-Aによるリン酸化STAT3の核内移行を、STAT3抑制作用を持つdominant negative STAT3を発現するアデノウイルスベクター(Dn STAT3 Adex)を用いて検討した。この結果、Dn STAT3 AdexはVEG-Aによる核内移行を抑制することが明らかとなった。既に作成しており、直ちに使用可能である。 3.Dn STAT3 AdexがVEGF-Aによる皮膚リンパ管内細胞の遊走を抑制するかどうかをboyden chamber assayを用いて検討した、この結果、Dn STAT3 AdexはVEGF-Aによる細胞遊走を有意に抑制した。 (3)ヒト皮膚由来リンパ管内皮細胞の管腔形成におけるシグナル伝達機構の解明 コラーゲンゲル上でリンパ管内皮細胞を培養した後、VEGF-A添加により管腔形成を誘導、さらに、STAT3の関与を検討するために、リンパ管内皮細胞に対してDn STAT3 Adexを導入した。この結果、VEGF-Aにより管腔形成が顕著に誘導され、Dn STAT3 Adexは管腔形成を有意に阻害した。
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