研究概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症においては感染細胞の増殖や分化の異常がHPV型特異的であり、そのメカニズム解明がHPV研究分野の重要課題である。HPVは感染部位親和性の面から皮膚型と粘膜型にも分類され、理論的に表皮幹細胞と考えられているHPVの感染標的細胞の種類とその解剖学的分布がHPV型ごとに異なることを示している。このことは、身体各部に性状の異なる表皮(粘膜)幹細胞が存在することを意味している。 本年度の研究においては、今までの研究期間中に発見した複数の細胞質内封入体(封入体疣贅)の臨床所見、病理組織学的所見およびウイルスDNAの塩基配列面からの比較検討を行い、これらgenus gamma-とgenus mu-papillomavirusに分類されるようになった封入体疣贅の原因ウイルスのHPV感染症およびHPV研究分穿に誇ける意義と重要性について明らかにした(Current topics in Virology,in press)。 HPV型特異的感染部位親和性に関しては、HPV1およびHPV63の初期感染が手掌・足底のエックリン汗管を主な感染標的にしていること、HPV6のそれが主に肛門周囲の毛包を感染標的にしていることを明らかにし、HPV5が眉毛(その毛隆起部に存在する表皮幹細胞)を標的とするとする他研究グループの知見等と併せて、HPVが型特異的に各部の付属器(毛やエクリン汗管)に存在する様々の表皮幹細胞を漂的としている可能性を明らかにした。足底表皮様嚢腫の発症病埋として長く外傷による表皮の真皮内迷入説が唱えられてきたが、今年度の研究によりHPV感染のみならずHPV感染以外の様々な因子によりエクリン汗管が類上皮化生を来たした結果の可能性を明らかにした(投稿準備中)。
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