研究課題/領域番号 |
18591258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石河 晃 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (10202988)
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研究分担者 |
木村 佳史 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10306772)
天谷 雅行 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90212563)
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キーワード | 病理学 / 電子顕微鏡 / 細胞接着 / デスモグレイン / 免疫電顕 / デスモソース / 棘融解 / 水疱症 |
研究概要 |
天疱瘡は表皮細胞間に対する自己抗体により引き起こされる自己免疫性水疱症で、尋常性天疱瘡(PV)と落葉状天疱瘡(PF)に分類されている。今回の研究目的は、電顕的手法を駆使して抗Dsg1抗体により引き起こされるPFの水疱発症機序を解明することにある。そのためにまず初年度はPV、PFの病変を多数例、電顕的に検討し、患者の自己抗体プロフィールに基づき所見を整理し、抗Dsg1抗体が存在することによって生じる形態学的変化を明らかにすべく、解析を行った。これまでに蓄積したPV, PF患者皮膚電顕ブロック15検体より切片を作成、解析に耐えるものを選択し、抗体プロフィールを検討した。その結果、Dsg1抗体のみを持つもの2例、dsg3抗体のみを持つもの1例、両者を持つもの2例が解析対象となった。非水疱部、水疱辺縁部、水疱中心部について超微細変化を観察、比較を行った。Dsg1抗体の存在に特異的な変化は認められず5例ともほぼ共通する変化であった。全例において水疱辺縁ではデスモソームが半割されたものが多数観察され、水疱中心に向かうにつれ、ケラチン線維の核周囲への凝集をみた。また、非水疱部において5例中2例で細胞間の開大がみられ、デスモソームは保存されていた。一部の研究者は水疱発症機序として角化細胞の収縮が主因であると主張しているが、細胞間の開大は彼らの言う「角化細胞の収縮」と一致する。しかし、実際には細胞骨格の変化を伴わず、炎症細胞浸潤のともない、細胞間の浮腫が本体であると考えられた。5例全例で半割デスモソームがみられたのに対し、細胞間浮腫は2例の非水疱部でみられたにすぎず、水疱発症との関連は否定的であった。以上の観察事項から、水疱形成はデスモソームの半割から始まり、ケラチン線維の核周囲への退縮がそれに続くと考えられた。現在、これまでの観察事項を論文作成中である。
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