研究概要 |
脂質メディエータ-leukotriene B_4(LTB_4)は好中球,肥満細胞,マクロファージなどから放出され、細胞性・液性免疫を修飾し、尋常性乾癬,アトピ-性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患の病態を調節する可能性がある。これら炎症性皮膚疾患患者の表皮ケラチノサイトでは、memory T 細胞の浸潤を促すケモカインCCL27の産生が充進している。CCL27の産生には転写因子NF-κBが関与する。本研究では、ヒトケラチノサイトのCCL27の産生に対するLTB_4の作用を検討した。ケラチノサイトにおいて、LTB_4は,TNF-αに誘導されるCCL27の蛋白放出とmRNA発現およびNF-κBの転写活性を増強した。LTB_4は,単独で,あるいはTNF-αと協調してIκBαおよびNF-κB p65のセリンリン酸化を誘導した。これらLTB_4の作用はLTB_4レセプタ-BLT1のantagonist,G_<i/o> protein inhibitor pertussis toxin,MEK inhibitor U0126,phosphoinositide-3 kinase(Pl3K) inhibitor LY294002により抑制された。LTB_4はMEKあるいはPl3Kの下流のkinase,ERKあるいはAktのリン酸化を誘導し,LY294002は両者の,U0126は前者のリン酸化のみを抑制した。以上の結果から,LTB_4はケラチノサイトにおいて、シグナル伝達経路BLT1/G_<i/o>/PI3K/BRKを誘導することにより,TNF-αと協調してNF-κBを活性化し、CCL27の産生を促進することが示唆される。LTB_4はCCL27を介して尋常性乾癬,アトピ-性皮膚炎病変部へのmemory T 細胞の浸潭を誘導すると考えられ,これら炎症性皮膚疾患の治療の標的として重要である。
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