研究概要 |
Leptinは脂肪組織から放出される代謝ホルモンであるが、皮膚では表皮細胞,血管内皮細胞,汗腺などでも発現されている。 Leptinは免疫メデイエーターとして細胞性・液性免疫を修飾し、尋常性乾癬などの炎症性皮膚疾患の病態を調節する可能性がある。乾癬患者の表皮ケラチノサイトでは、感染防御,皮膚炎症,創傷治癒を促進する抗菌ペプチドhuman β-defensin-2(hBD-2)の産生が亢進しており,乾癬の病態に関与している。本研究では、ヒトケラチノサイトのhBD-2の産生に対するleptinの作用を検討した。ケラチノサイトにおいて、Leptinは, IL-1βと協調してhBD-2の蛋白放出とmRNA発現を増強した。hBD-2の発現は転写因子NF-кB, STAT1,STAT3の活性化により誘導されるが,leptinはこのうちSTAT1,STAT3の転写活性を増強した。LeptinはSTAT1,STAT3のチロシンおよびセリンリン酸化を誘導し, 前者はJAK2 阻害薬 AG490, 後者は p38 MAPK 阻害薬 SB202190により抑制された。LeptinはJAK2のチロシンリン酸化, p38 MAPKのチロシン・スレオニンリン酸化を誘導した。以上の結果から, leptinはケラチノサイトにおいて、JAK2, p38 MAPKを活性化することにより, IL-1βと協調してSTAT1, STAT3を活性化し、hBD-2の産生を促進することが示唆される。Leptinは皮膚において, hBD-2産生を介して抗菌活性を増強するのみならず,表皮細胞の増殖, 血管新生, Th17細胞の浸潤を促進し,尋常性乾癬の進展を促すと考えられ,乾癬の治療の標的として重要である。
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