研究概要 |
プロラクチンは下垂体前葉から放出されるホルモンであるが、皮膚では毛包,汗腺などでも発現されており、免疫メデイエーターとして細胞性・液性免疫を修飾する可能性がある。尋常性乾癬はTh1,Th17細胞主体の炎症性皮膚疾患で、その発症にプロラクチンが関与する可能性が示唆されている。尋常性乾癬病変部のケラチノサイトではTh17の遊走を促すケモカインCCL20の産生が亢進している。CCL20の産生には転写因子NF-κB, AP-1が関与する。ヒトケラチノサイトのCCL20産生に対するプロラクチンの作用を検討した。プロラクチンは単独あるいはIL-17と協調してケラチノサイトのCCL20産生を促した。プロラクチンはAP-1の転写活性,AP-1 componentであるc-Fos, c-Junの発現を促し、IL-17と協調してNF-κBの転写活性を増強した。プロラクチンによるc-Fos発現はMEK/ERKシグナル経路に、c-Jun発現はJNKシグナル経路に依存していた。プロラクチンはERK, JNKをリン酸化した。プロラクチンはケラチノサイトにおいてMEK/ERK, JNKシグナル経路を活性化することにより、CCL20の産生を促進する。プロラクチンはCCL20を介してTh17の皮膚浸潤,炎症を惹起すると考えられる。これらプロラクチンの作用の制御は、乾癬の治療戦略となりうる。
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