マイクロRNA(miRNA)は遺伝子の発現調節を司る機能分子であり、近年、腫瘍をはじめさまざまな疾患の病態を知る新しい手がかりとして注目されている。本研究では、表皮の増殖・終末分化に関わるmiRNAを探索し、その下流にある遺伝子の発現調節機構とシグナル伝達およびその制御について研究を展開してきた。本年度は、角化細胞の終末分化に関連するmiRNAを同定する目的で、細胞外Ca^<2+>鴛濃度上昇により終末分化誘導をかけた培養ヒト角化細胞からRNAを経時的に抽出し、リアルタイム逆転写PCR反応を行いてmiRNAの変動を検討した。昨年度、マイクロアレイ解析によりスクリーニングしたmiRNAのなかで、hsa-miR-29aを含め複数のmiRNAの変動を確認できた。次に、これらmiRNAの前駆体あるいはインヒビターのトランスフェクションを行い、角化細胞の機能に関連する遺伝子の発現を解析した。その結果、hsa-miR-29aの阻害により、トランスグルタミナーゼ1(TGM1)遺伝子の発現は対照に比較して有意に抑制された。TGM1欠損マウス表皮のマイクロアレイ解析では、17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ7やコレステロール25-ヒドロキシラーゼなどの脂質代謝に関わる遺伝子発現やプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)のアゴニスト候補であるカリクレイン関連ペプチダーゼ6遺伝子の変動が検出され、角層細胞間脂質分子の配向に乱れが観察されることから、hsa-miR-29aはこれらバリア関連遺伝子発現を上位で制御し、表皮細胞系列の特性維持に不可欠な役割を果たすことが示唆された。
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