研究課題
基盤研究(C)
精神疾患簡易構造化面接法MINI-KIDを用いて、千歳市の小学4年生から中学1年生までの738人(男子382人、女子356人)に対して精神科医が直接面接を行い、気分障害の有病率に関する疫学調査を行った。その結果、以下の3点が明らかになった。(1)小学4年生から中学1年生における気分障害の有病率は、大うつ病性障害1.5%、小うつ病性障害1.4%、気分変調性障害0.3%、双極性障害1.1%という値であった。とくに大うつ病性障害においては中学1年生では4.1%と高く、成人の有病率とほぼ同じ値と考えられた。(2)MINI-KIDの双極性障害の診断については、偽陽性が少なくないということが明らかになった。健康な子どもでもMINI-KIDの(軽)躁病エピソードの質問を肯定してしまう子どもが存在した。また、偽陽性の子どもの一部は、家族や教師からの情報がないために断定的なことをいうことはできないが、注意欠陥多動性障害(AD/HD)やアスペルガー障害の診断が強く疑われた。双極性障害の診断においては、発達歴、行動観察、家族や教師からの情報収集などを十分に行い、総合的な診察が必要であると考えられた。(3)気分障害とライフスタイルの関係をみると、大うつ病性障害においては、女性であることと長時間のゲームが危険性が高いという結果となった。大うつ病性障害とゲームの時間の関係については様々な解釈が可能であった。以上の結果から、わが国の一般の小・中学生においても気分障害は少なからず存在し、その有病率はこれまで欧米で報告されているものと概ね同じ値であった。また、近年北米の一部で報告されている小児期における双極性障害の高い有病率については、双極性障害の症状と広汎性発達障害やAD/HDの症状において、多動、多弁、イライラ感、衝動性、注意散漫などの重なる部分が多いことが大きな理由であると考えられた。
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