非定型抗精神病薬の登場により過鎮静、錐体外路症状といった不快な副作用の発現率が低くなり、入院期間の短縮化やQOLの改善が期待できるようになった。一方、これまであまり関心がもたれなかったが、QOLや生命に直接あるいは間接的に影響を及ぼす体重増加や耐糖能異常などの副作用に注目が集まっている。そこで申請課題では非定型抗精神病薬による代謝性疾患に焦点をあて、薬剤とメタボリックシンドロームとの因果関係について検討した。オランザピンで治療を受けている統合失調症患者22名とリスペリドンで治療を受けている統合失調症患者38名に絶食時に糖・脂質負荷食品を用い、負荷前、60分後、120分後に採血を行い、血糖、血清インスリン、中性脂肪の経時的変化を調べた。これらのデータよりインスリン分泌能(inslinogenic index)、インスリン抵抗性(HOMA-IR)を算出した。さらに中性脂肪、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、レプチン、レムナント様リポ蛋白コレステロール、Apo-Bおよび赤血球中ソルビトールを測定した。オランザピン服用群では負荷前、負荷1時間後、2時間後ともにVLDLコレステロール、中性脂肪、レムナント様リポ蛋白は有意に高値を示した。一方、アデポネクチンは有意に低値であった。年齢、性別、BMIは両群間に差はなかった。Inslinogenic index、HOMA-IRには両群間に差はなかった。量剤間で糖代謝の項目には大きな差は見られなかったが、内臓脂肪蓄積の指標であるアデポネクチンがオランザピン服用群で低かった。上記より、オランザピンの方が内臓脂肪が蓄積しやすく、メタボリックシンドロームになりやすい薬剤であることが確認された。
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