【目的】アルツハイマー型認知症(AD)はうつ状態を呈することがあり、ADとうつ病性仮性認知症の鑑別が困難な場合がある。我々は、先行研究においてMRIの拡散強調画像により、軽度認知障害(MCI)段階のADでも海馬CA1や海馬支脚などの萎縮を検出できることを報告した。本研究の目的は、本方法を用いて高齢者のADとうつ病の鑑別が可能か否かを検討することである。【方法】対象は平成18年9月から平成19年3月までの間に、山形大学医学部付属病院精神科に通院または入院中の患者で、本研究の参加に同意を得られた65歳以上の高齢者7名(MCI3名、うつ病4名)である。MRIはGE社Signa3Tでspine-echo-planar法を用いて、傾斜磁場を前後方向に印加して、第4脳室底に平行な冠状断5mmスライスを撮影した。本方法により磁場と同方向の神経線維は低信号に左右や上下方向に走る神経線維は高信号となり、海馬の内部構造が明瞭に描出される。MCIとうつ病患者の海馬支脚、CA1の厚さを計測し比較検討した。なお、本研究は山形大学倫理委員会の承認を得ている。【結果】平均年齢はMCIが79.3±3.5歳、うっ病が77.8±4.7歳であった。右海馬支脚厚はMCIでは1.63±0.10mm、うつ病では1.82±0.29mm、右CA1厚はMCIでは1.67±0.19mm、うつ病では1.78±0.51mm、左海馬支脚厚はMCIでは1.66±0.15mm、うつ病では1.58±0.35mm、左CA1厚はMCIでは1.58±0.17mm、うつ病では1.64±0.28mmであった。今後、症例数を増やして統計解析を行う予定である。
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