研究概要 |
本研究では、アルツハイマー病(AD)の2大病因仮説である興奮毒性仮説とアミロイド仮説との関連を明らかにすることを目的とする。本年はAD剖検脳を用いて、主に抑制性神経伝達系の障害と神経細胞死との関係について検討した。 アルツハイマー病海馬におけるGABA受容体に関する検討 【方法】19例の剖検脳海馬(6例は非認知症、13例はAD)の40μ厚の切片に対して、GABA受容体(γ1及びγ2)に対する抗体を用いて免疫染色した。 【結果】γ1およびγ2の染色性は、AD群のCA2,3,4領域で増強した。またGABA受容体が増強した神経細胞には神経原線維変化の形成を認めなかった。 【結論】GABA受容体がAD病理に対して防御的に作用している可能性が推察された。 アルツハイマー病海馬におけるセロトニン受容体に関する検討 【方法】上記と同様の剖検脳海馬切片に対して、セロトニン1A受容体に対する抗体を用いて、ABC法により免疫染色した。 【結果】AD海馬のCA1およびsubiculum領域でセロトニン1A受容体の免疫反応性の著明な低下を認めた。 【結論】AD海馬における、セロトニン1A受容体の減少は、ADにしばしば随伴する易怒性、攻撃性との関連が考えられる。また神経細胞変性に関連する可能性も推察される。 この結果を第6回International College of Geriatric Psychoneuropharmacologyで発表した。
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