研究概要 |
本研究では、脳機能イメージング(近赤外線スペクトロスコピー:NIRS)によって捉えられる前頭葉機能異常を、統合失調症のエンドフェノタイプ(中間表現型)として捉え、症候や異種性を考慮した上で、分子遺伝学的特長との関連を検討することで統合失調症の病因・脳病態生理の解明に資することを目指している。特に前頭葉機能障害との関連について注目されているcatechol O-methyltransferase(COMT) G1947A(val^<108/158>met)多型に着目し、最新の脳機能計測技術と分子遺伝学的分析を双方向に組み合わせ、統合失調症の前頭葉機能異常を統合的に明らかにすることを目的としている。 今年度(平成18年度)の近赤外線スペクトロスコピーの測定をした被験者は、統合失調症患者および健常者を研究計画通りにそれぞれ約100名程度となり、臨床指標・薬物量についても記録し終えており、順調に被験者数を伸ばしている。遺伝子データとの重複例は、健常者約70名、統合失調症患者約50名となり、群間比較などの統計学的な検定に十分な例数に至っていると考えている。 今年度(平成18年度)は学会発表として、少数例でのCOMT多型との関連についての予備検討の結果を、2006年7月、第5回日本光脳機能イメージング研究会、(シンポジウム、東京)や2006年9月、第28回日本生物学的精神医学会(名古屋)において発表した。 現在までの結果として、各群で語流暢性課題遂行成績に有意差はないにもかかわらず、COMT遺伝子多型(val 108/158 met)のMet carrier群では、Val/Val群に比べて、課題遂行中の[oxy-Hb]増加が大きく、有意差のあるチャンネルを前頭前野に認めた。一方、薬物服用量(CP換算)と[oxy-Hb]変化量には関連はなかった。こうした統合失調症において神経伝達物質関連遺伝子とMRIなど前頭葉計測を用いた関連研究は散見されるが、NIRSを中間表現型とした研究は我々の知る限りまだない。本研究でも先行研究同様に、統合失調症の前頭葉機能への神経伝達物質関連遺伝子の影響が示唆された。 今後の予定(平成19年度)として、サンプルを増やした検討結果を2007年5月Society of Biologjcal Psychiatry,62^<nd> Annual Scientific Convention & Meetjng (San Diego, California, U.S.A.)において発表する予定であり、英文雑誌へ論文投稿の準備も進めている。
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