我々は、ミトコンドリア複合体Iのサブユニットをコードする核遺伝子、NDUFV2と双極性障害との関連をすでに見出しているが、近年、同遺伝子と統合失調症との関連を示唆する報告がなされている。NDUFV2遺伝子の位置する遺伝子座18p11は双極性障害とともに、統合失調症においても疾患との連鎖が示唆される領域でもあることから、双極性障害において疾患との関連を認めたNDUFV2遺伝子の一遺伝子多型(SNP)、およびハプロタイプと、統合失調症との関連を調べた。229名の統合失調症患者および222名の健常対照群による疾患対照研究では、個々のSNPと疾患との間に統計学的に有意な関連は認めなかったものの、双極性障害において疾患との関連を認めたハプロタイプが、統合失調症においても同様に発病危険因子となることが示唆された(P<0.0001)。 また、我々は、以前に双極性障害との関連が報告されたミトコンドリアDNA(mtDNA)多型の一部が存在する呼吸鎖サブユニット遺伝子について、そのmRNA発現量を培養リンパ芽球で測定した。現在までに測定を終えたサブユニット遺伝子では、双極性障害と遺伝子発現量との間に関連は認めておらず、これは多くのミトコンドリア関連核遺伝子の発現量が疾患群で低下していた結果とは異なる。今後疾患とmtDNA発現量との間に関連を認めたサブユニット遺伝子が見出されれば、その遺伝子に存在する疾患関連多型が気分安定薬の治療反応性予測因子となりうるか否かについて検討を加える予定でいるが、mtDNAによってコードされる遺伝子の発現量と疾患との有意な関連がみられなければ、ミトコンドリア関連核遺伝子の多型について、気分安定薬の治療反応性を調べることとする。
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