研究課題
基盤研究(C)
神経原線維変化の主要構成成分であるタウ蛋白は自己重合(自己線維化)の過程を通して蓄積するが、14-3-3蛋白を含むタウ蛋白結合因子はこの自己重合を促進させることが知られている。14-3-3蛋白は結合する相手の蛋白が特定のリン酸化を受けることによって結合親和性が変化することが知られているが、タウ蛋白に関してはまだ明らかではない。そこで、タウ蛋白と14-3-3蛋白との結合に関するリン酸化の影響を知るために以下の実験をおこなった。まず、蛋白間の結合性に関して、pull-down assayをおこなったところ、PKAまたはPKBによってリン酸化されたタウ蛋白は非リン酸化タウ蛋白よりも結合量が多かった。さらに、表面プラズモン共鳴法を用いて検討をおこなったところ、リン酸化タウ蛋白は非リン酸化タウ蛋白よりも約30倍結合親和性が高かった。タウの部分欠失蛋白を作成して、タウ蛋白と14-3-3蛋白との結合部位についてpull-down assayを用いて検討をおこなったところ、非リン酸化タウ蛋白では微小管結合領域がその結合領域であり、リン酸化タウ蛋白では微小管結合領域およびアミノ酸180から244までの微小管結合領域に隣接する領域がその結合領域であった。このリン酸化に特異的な結合領域の中で、PKAおよびPKBによってタウ蛋白がリン酸化される部位であるSer214部位に注目し、これをAlaに置換した変異タウ蛋白(S214A-tau)を作成して同様の検討をおこなったところ、S214A-tauはリン酸化されても結合親和性に変化はなかった。これより、タウ蛋白と14-3-3蛋白との結合には2つの様式があり、リン酸化に依存しない様式では微小管結合領域に結合し、PKAまたはPKBによるリン酸化を介した結合様式ではリン酸化したSer214部位とその周辺領域に結合することが明らかとなった。
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