NMDA受容体機能を阻害する作用のあるPCPが幻覚妄想などの症状だけでなく意欲低下、感情鈍麻、認知機能障害などの症状も誘発することから統合失調症とNMDA受容体との関連が近年注目されている。またD体のアミノ酸の一つである、Dセリンが脳内に存在し、NMDA受容体機能を活性化することからDセリン合成調節により統合失調症の治療効果を見いだすことを目的としてDセリンと結合するタンパク質としてPICK1に注目しPICK1と統合失調症との関連を解析する目的にて本研究を行った。日本人の統合失調症とPICK1遺伝子との相関解析では特に解体型でのPICK1遺伝子領域のイントロン4領域のSNPとこれを含むハプロタイプにて優位な相関を認めた。しかし欧米サンプルでは解析対象可能であったたサンプル数が少ないためでもあるが優位な相関が認められなかった。また、Dセリンの合成酵素であるセリンラセマーゼ(SR)をほとんど持たない培養細胞系にSRとPICK1を遺伝子導入し、Dセリン合成の基質であるLセリンを添加したときに培養液に遊離されるDセリンを高速液体クロマトグラフ法で測定した。SR単独に比べSRとPICK1両方を導入した群ではDセリンの培養液への遊離量は優位に高値を示した。またSRのY末端にチロジンを付加したもの、PICK1のPDZドメインのミュータントではどちらもDセリン遊離量の増大はみとめなかったことによりSR-PICK1の結合によりDセリン合成の賦活効果がもたらされることが示唆された。
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