平成18年度はスライスパッチクランプ法を用いて神経修飾因子の錐体細胞に対する効果を検討した。特に神経細胞の興奮性に対する効果を明らかにするために、神経細胞の過分極に関係し、カルシウムで活性化されるカリウムチャネル(Ca^<2+>-activated K^+ channels)の機能に対するドーパミンをはじめとするモノアミン類(ドーパミン(DA)、セロトニン(5-HT)、ノルアドレナリン(NA)、およびムスカリン型アセチルコリン受容体作動薬カルバコール(CCh)の効果を調べた。 各薬剤は20μMで潅流液中に投与し、1)電流固定モードでの後過分極の振幅、2)電位固定モードでの脱分極パルス後の外向き電流(後過分極の基盤となる電流)、およびスパイク発射数の変化を測定した。 1)スパイク発射後の後過分極(afterhyperpolarization)に対しては、DAはコントロール状態と比べて、95.2±6.8%(p=0.78)と変化がなかったが、5-HT 65.4±8.3%(p<0.001)、NA 70.3±6.9%(pく0.005)、CCh 55.6±7.3%(p<0.001)と有意にコントロール状態(薬剤負荷前の値)に比べて減少を示した。しかし、これらの修飾因子にまったく反応しない細胞もみられた。 2)脱分極後の外向き電流に関しては、ピーク値とslow kineticsの部分に当る後半成分(電流を時間で積分し、移動した電荷量で計算)した。過分極の振幅に対応するようにDAでは-23%と変化は小さかったのに対して、5-HT、 NA、 CChではそれぞれ、-78%、-65%、-73%とコントロール状態に比べて有意(何れもp<0.001)な低下を示した。 3)スパイク発射数は、DAでは-45%と有意に減少したのに対して、5-HT、 NA、 CChでは、それぞれ+35%、+27%、+48%と有意に増加した。
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