研究概要 |
平成19年度は錐体細胞のスパイク発射後の後過分極の遅発成分(slow afterhyperpolarization, AHP)に対する神経修飾因子の作用を、以下の2点について検討した。 1)ドーパミン(DA)の濃度展開 2)ムスカリン受容体作動薬カルバコール(CCh)、ノルアドレナリン(NA)、セロトニン(5-HT)のsAHPでの相互作用<結果> 1)ドーパミン(DA)の濃度展開:(1)移動電荷量0.3μM,-7.1±9.8%;3μM,-25.4±7.5%;10μM,-37.4±5.9%;100μM,-51.0±6.4%。(2)スパイク頻度の平均変化率0.3μM,-12.5±9.4%;3μM,-35.0±20.4%;10μM,-25.8±25.6%;100μM,-43.9±16.2%。 2)神経修飾因子の相加効果:移動電荷量5-HT+NA(n=5),-117.4±23.4%;CCh+5-HT(n=4),-182.9±63.4%;NA+CCh(n=6),-181.6±24.6%。Tukey-Kramer post-hoc testにより、CChを含む2つの組合せでは、単独投与の場合に比べて、I_<sAHP>は有意に抑制され、slow afterdepolarization currentsにシフトすることが明らかになった(CChを含む組合せでのp値は、CCh+5-HTではCCh単独とはp<0.01、5-HT単独とはp<0.05、NA+CChではNA単独とはp<0.05、CCh単独とはp<0.01)。 <考察> 本研究の結果より、以下の可能性が示唆される。 1)DAは他の神経修飾因子とほぼ同程度にIsAHPを抑制したが、スパイク頻度はむしろ減少を示したことより、錐体細胞の興奮性調節におけるsAHPの修飾作用は主要な関与を行わない。 2)深層の錐体細胞においては、CChはNAあるいは5-HTとの間でsAHPの修飾作用で相互作用を有する。
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