研究概要 |
平成18〜19年度は錐体細胞のスパイク発射後の後過分極の遅発成分(slow afterhyperpolarization, sAHP)に対する神経修飾因子の作用を電気生理学的手法を用いて、以下の3点について検討した。 1)ムスカリン受容体作動薬カルバコール(CCh)、ノルアドレナリン(NA)、セロトニン(5-HT)、ドーパミン(DA)のsAHP及びスパイク発火頻度に対する検討。 2)sAHPとスパイク発火頻度に対するDAの効果の濃度依存性の検討。 3)CCh、NA、5-HTを同時投与した際のsAHPに対する相加効果の検討 <結果> 1)CCh、NA、5-HTはsAHPを抑制し、発火頻度を増したが、DAはsAHPの抑制にも拘らず頻度を増さなかった。 2)ドーパミン(DA)の濃度展開:DAは濃度依存的にsAHPを抑制したが、何れの濃度でも発火頻度は増えなかった。 3)相加効果:移動電荷量の測定から、CCh+5-HT及びNA+CChでは相加効果を認めたが、5-HT+NAでは認めなかった。 <考察> 1)DA以外の神経修飾因子は、前頭前皮質の興奮性神経回路においてsAHPを抑制することで、活動性の高まった錐体細胞の発火を持続させ、SN比を増すことが示された。 2)DAはsAHPの抑制を介した錐体細胞の興奮性増加には関与していないが、受容体サブタイプ毎の機能を解析する必要性が考えられた。 2)前頭前皮質深層の錐体細胞で、CChはNAあるいは5-HTとsAHPの抑制を介して相互作用を有し、細胞の興奮性を調節することが明らかになった。この事実は注意機能と他の認知機能の相互作用の細胞レベルでの基盤となりうる。
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