研究概要 |
【緒言】母仔分離(neonatal isolation; NI)は、成熟期ストレス負荷時の視床下部- 下垂体-副腎系の過剰亢進やGABA-A受容体機能の脆弱性を惹起し、その結果けいれんに伴う海馬細胞障害・記憶・学習障害など様々な障害を誘導する、乳幼児期ストレスと考えられている。しかしながら、当該ストレスに暴露された成長ラットのけいれん獲得に関する研究は少ない。【方法】宮崎医科大学動物実験委員会承認の下、Kehoe Pらの方法に従い、雄性仔ラットに対して母ラットや同胞と隔離するNIストレス(PN2-9,lh/lday)を負荷した。生後21日齢で離乳を行い、生後49日齢に至った 時点でペンチレンテトラゾール(PTZ)40 mg/kgを隔日に腹腔内投与開始し、全身けいれんが連続2回出現した時点でPTZキンドリング完成とした。完成過程での観察において、各けいれん潜時・持続時間・刺激回数を記録した。また、ウエスターンブロット法を用いてPTZキンドリング開始前のNIストレス海馬内のグルタミン酸・GABA関連蛋白の発現解析を行った。【結果】NI群ではキンドリング初期のけいれん潜時が有意に短く、キンドリング後半でけいれん持続時間が有意に長かく、早期にキンドリングが完成した。NI暴露群においてGLAST, EAACl, Glu-Rl, NMDA-Rlは有意に対照群と比し発現増加、一方GAT-1, GTRAP3-18は有意な発現の低下が観察された。【考察】GABA合成・貯蔵促進を示唆するEAACl増加とGTRAP3-18低下等の結果が得られたが、キンドリング早期完成には、NIによるGlu-RlやNMDA-R1の上昇などのグルタミン酸受容体の発現増大と脆弱なGABA-AR機能に加えGAT-1の低下による逆向輸送低下が関与していると思われる。
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