高齢化社会に於ける認知症患者の増加は社会問題であり、疾患の治療法を早期に確立する必要性がある。認知症の多くはアルツハイマー病でありその原因として脳内に於けるβアミロイドの生成と蓄積が考えられている。さらにβアミロイドは凝集する間にモノマーから2量体、3量体をへてフィブリルを形成し老人斑となる事が知られているがどの段階が最も神経細胞にとって毒性があるかは不明である。この点を解明するのが今回の目的となる。 平成18年度にはβアミロイド蛋白のオリゴマーの生成を試みた。電気泳動では4量体まで確認できたが精製分離が不十分で十分な各ペプチドが得られず現在この作業を継続している。また、アルツハイマー病の治療薬として抗生物質のクリオキノールが検討されているがβアミロイド蛋白の凝集時に於けるフリーラジカル産生に関して影響を与えるのかに付いて検討したところフリーラジカルの産生を優位に低下させる作用は認められなかった。さらに凝集抑制作用に付いてもThioflavin-Tおよび電子顕微鏡を用いた検討では凝集抑制作用も認められなかった。この薬剤の効果は重金属の捕捉効果等にあるのではないかと考えた。 オリゴマーの作成分離が成功すればそれらを使用し今年度は細胞毒性実験を行っていきたいと考えている。
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