研究概要 |
【はじめに】必須アミノ酸であるhomocysteinは,統合失調症患者の血漿中の濃度が健常人に比べ有意に高いことが報告され,この機序として,homocysteinをメチル化しmethionineに変換する反応に関わるメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素methylenetetrahydrofblate reductase (MTHFR)の機能低下が想定されている。MTHFRが重度に機能欠損した患者は,統合失調症様の精神症状を示すことも報告されている。このため,この酵素をコードする遺伝子(MTHHFR)について,日本人を含む複数の人種を対象に,この遺伝子上のアミノ酸置換を伴うSNPについての関連研究が行われ有意な関連が報告されている。しかし,近年,これまでに有意とされてきた候補遺伝子多型が大規模サンプルを用いた追試によって否定されることも多く,遺伝子関連研究においては連鎖不平衡を考慮したgene-basedな大規模サンプル解析が必須であると考えられている。MTHFRに関しても,有意な関連が報告された研究のサンプルサイズは比較的小さく(400以下),また,そのほとんどが単一のSNPについての関連を検討したものである。本研究は,MTHFRを大規模試料(約700)を用いてgene-basedに解析し,MTHFRと統合失調症の関連を明らかにすることを目的としている。 【対象と方法】名古屋大学倫理委員会の承認を得て,日本人統合失調症(DSM-IV)患者384名と日本人健常者384名を対象とした。HapMapデータベースより,MTHFRの上流,下流3kbに存在するSNPを選択し,r^2 thresholodを0.8としてtagSNPを選出した。各SNPの遺伝子多型はTaqMan PCR法を用いて決定した。 【結果と考察】8つのSNPがtagSNPとして選出され,いずれも統合失調症との関連は見られなかった。今後はサンプル数を拡大し,統計学的Powerを挙げて関連の有無を確認する予定である。
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