研究概要 |
【はじめに】 Methylenetetrahydrofolate reductase(MTHFR)は、脳内におけるメチル基供与の主要経路に関与し、なかでもドパミン作動性神経において、神経毒性作用を有するhomocysteinをメチル化することによってmethionineへと変換する働きやドパミン自体のmethylationにも関与している酵素である。統合失調症では、ドパミン作動性神経経路の異常が示唆されており、MTHFRが重度に機能欠損した患者は、ホモシステインが上昇し、統合失調症様の精神症状を示すことが報告されている。これまでにMTHFR遺伝子の2つの機能的多型(C677T、A1298C)と統合失調症との関連解析が数多く報告されているが一貫した結論に至っていない。これまでの研究はいずれもサンプルサイズが比較的小さく(400名以下)、ほとんどが単一のSNP(C677TあるいはA1298C)との関連を検討したものであることから、本研究ではMTHFR遺伝子について、大規模サンプルを用いて,gene-wideに関連解析を行った。 【対象と方法】 統合失調症患者全723名、健常者全767名を対象とした。Hap Mapデータベースを用いてr^2>0,8をthresholdとして、taggingSNPを選出した。各taggingSNPの遺伝子多型はTaqMan法により同定し、各群のallele,genotype頻度の比較を行った。尚、本研究は帝京大学および名古屋大学医学部倫理委員会の承認を得て、文書による同意を得て行われた。 【結果と考察】 taggingSNPとして、7つのSNPを選出した。各SNPにおいてgenotype、alleleいずれにおいても統合失調症との間に有意な関連は認められなかった。MTHFR遺伝子は統合失調症の病態に関与している可能性は否定的であると考えられた。
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