COMT(Catechol-0-methyltransferase)はドーパミンの減成に重要な代謝酵素で、そのパスウェイは前頭葉に依存していることから、前頭葉機能との関連が指摘されている。COMTには遺伝子多型(Val/Val=Val、Val/Met、Met/Met=Met)があり、前頭葉における情報処理、遂行機能、ワーキングメモリーに差異が生じることが分かっている。 一方、ADHD(注意欠陥多動性障害Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は児童期の有病率が3〜7%という多因子遺伝病であり、多くの候補遺伝子が報告されている。今回、ADHD対象者15名と家族の計49名で血液の提供を受け遺伝子解析に協力してもらったので結果を報告する。なお本研究は金沢医科大学倫理委員会の承認を得、研究参加者から書面で同意を得た。 ADHD対象者は男子13、女子2、年齢は8〜30歳、全員が混合型である。Valは7名、Val/Metは6名、Metは2名であった。ValとVal/Metの各1名は対象者本人のみであり、家族の参加は13家族34名(父11名、母12名、姉3名、弟4名、妹4名)である。Val 6名の家族17名はVal 12名、Val/Met 5名であり、Val/Met 5名の家族13名はVal 4名、Val/Met 7名、Met 2名であり、Met 2名の家族4名はVal/Met 3名、Met 1名であった。 Val/Metがメチオニンへ変異するとCOMT活性は低下し、バリンアレルは前頭前野におけるドーパミン代謝を促進し、遂行機能の低下と関連するとされる。ADHD対象者では46.7%がVal型で、その家族は78.3%(23名中18名)がVal型であった。 今後は前頭葉機能の解析を行い、その結果と遺伝子多型の関連性を分析する。
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