研究概要 |
統合失調症は高血圧・糖尿病・アレルギー性疾患などと同じように複数の疾患感受性遺伝子の相互作用と環境因子により生じる複雑遺伝疾患であると考えられており、人口の約1%という罹患率の高さとその個人的・社会的損失の大きさとから、原因究明・治療法の改善に対する社会・経済的要請は非常に高い。また、近年のチップテクノロジーの進歩によって、全ゲノム領域に対しての網羅的な連鎖不平衡マッピングが技術的に可能となったことから、メンデル型遺伝疾患に比べて遺伝子効果が弱い複雑遺伝疾患の感受性遺伝子の同定が期待されている。しかし、未だ統合失調症を対象としての10万個以上の高密度SNPsマーカーを用いた報告はない。 そこで、本研究では10万個以上の高密度SNPsマーカーを用いた網羅的な連鎖不平衡マッピングを行い、統合失調症感受性遺伝子の同定を行った。 まず、第1次スクリーニングとして、日本人統合失調症罹患者を含む120家系を対象とした連鎖不平衡マッピングを行なった。実験には、Affymetrix社GeneChip Human Mapping 100K Arrayを用いて115,770SNPsの伝達不平衡を確認し、1,159SNPsに有意な結果を得た(P<0.01)。 次に、第2次スクリーニングとして、日本人統合失調症罹患者および健常対照者約1,000人のサンプルを用いて有意なSNPsマーカーを追試したところ、70SNPsについて有意な関連が再現された(P<0.05)。従って、これらのSNPs近傍には統合失調症感受性遺伝子が存在している可能性が高いと考えられ、さらに、それらの有意な伝達不平衡が検出されたSNPs座位の近傍に存在する遺伝子群について詳細な分子遺伝学的検討を行ったところ、統合失調症発症への関与が強く示唆される複数の遺伝子を同定した。
|