研究概要 |
本年度は初年度で被検者の募集途上であるために現時点では男性、特に高年者の画像データが不十分な状態であった。このため本年度は女性のみを対象とし解析を行った。対象とした女性は明らかな頭部外傷歴、精神神経疾患のない正常ボランティア73名(39.2±14.9歳)で、当院に設置されている1.5 Tesla MRI装置を用いて3D-SPGR(spoiled grass)法、デュアルスピンエコー法、拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging:DTI)の撮像を行った。この研究は当該施設の倫理委員会の認可を受け、全例からインフォームドコンセントを書面にて得ている。全脳の加齢性変化に関する検討項目として全脳灰白質(GMV)・白質容積(WMV)、全脳灰白質・白質容積を全頭蓋内容積で除した灰白質容積比(GMF)・白質容積比(WMF)、全脳平均fractional anisotropy(FA)、および全脳平均mean diffusivity(MD)を算出し、Pearson 's product moment correlation法を用いて5%の危険率で検定した。またvoxel-base解析には主としてstatistical parametric mapping(SPM2)を用いた。結果としてGMV(P<0.0001,791.406-2.937×age;R^2=0.439)、GMF(P<0.0001,0.542-0.002×age;R^2=0.643)、FA(P<0.0001,0.294-0.0004162×age;R^2=0.228)は年齢に対して有意な負相関を、MD(P<0.0001,0.63+0.001×age;R^2=0.309)は有意な正相関を示したが、WMV・WMFはともに年齢に対する有意な相関は見られなかった。Voxel-base解析では脳容積とFAに関して前方構造優位に負相関が見られ、MDは広汎な皮質・脳室周囲白質に正相関が観測された。また帯状回及び帯状束では相対的な容積保持が見られ、両側被殻ではFAの正相関が認められた(平成18年度の研究成果参照)。来年度以降ボランティアの募集を引き続き行い、男性に関する脳容積加齢性変化の知見を加え、また脳局所の容積・拡散テンソルパラメータを算出することを目標とする。
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