研究概要 |
非侵襲的に頭蓋内環境の局所変化を伴う病変の診断に役立てるために,磁気共鳴画像(MRI : magnetic resonance imaging)診断装置で得た画像情報から脳局所の動的弾性を評価することを試みた. 最初に,心周期における頭蓋内容積負荷すなわち頭蓋内容積変化(phase contrast cine MRIで測定した頭蓋腔に流入出する動静脈血と髄液の時問流量および脊髄の変位から算出)と,心周期における脳の拡散係数(ADC : apparent diffusion coefficient)の変化との関係を調べた.Pallallel MRIとhalf scanを併用して脳のbulk motionが影響しない極短時間(約3ms)でデータサンプリングしても,全白質のADCは心周期において有意に変化し,ADC波形は頭蓋内容積変化波形と同調していた(RSNA2006などで報告).頭蓋内容積変化は,MRIによる頭蓋内コンプライアンス導出時の入力成分であることから(本報告書の研究成果論文参照),脳局所におけるADCの変化量(ΔADC)が頭蓋内コンプライアンスに関係することが判明した.これより,脳局所のΔADCまたは頭蓋内容積変化あたりの局所ΔADCによって,脳局所のコンプライアンスすなわち容積弾性係数(または伸展性)を評価可能であると結論づけた. 一方,脳局所弾性を定量化するために心周期における局所血流量変化(圧力勾配の変化量)や局所組織変位量を測定できたが,撮像時間が長くなる割には,逆に様々なアーチファクトや演算時の不確定項の影響によって測定誤差が非常に大きいことが判明した.そこで,次年度は脳局所のΔADCまたは頭蓋内容積変化あたりの局所ΔADCの値から,どの程度の精度で脳の局所弾性を評価できるかを検証し,さらに相対値から絶対値に変換する方法を検討する予定である.
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