研究課題
基盤研究(C)
【目的】大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術において大動脈壁と人工血管膜との間の生物学的固着を積極的に促進させ治療効果を能動的に高めることを目標とし、本研究では線維芽細胞増殖因子(以下、bFGF)溶出型のステントグラフトを開発、生体内で生じる組織変化を評価検討し、薬剤溶出型ステントグラフトの臨床応用の可能性を模索することを目的とした。【対象と方法】薬剤キャリアとしてハイドロゲルを用いた。ステントグラフトは頭側より1.A群(非ハイドロゲルコーティンググラフト+蒸留水)、2.B群(ハイドロゲルコーティンググラフト+蒸留水)、3.C群(ハイドロゲルコーティンググラフト+bFGF)とし、6頭の生体ブタの腹部大動脈にそれぞれ留置した。30日後の血管造影、血管内超音波及び組織標本(HE染色、EVG染色、α平滑筋アクチンによる免疫染色)にて宿主血管壁との間に生じる組織変化を比較した。【結果】新生内膜比(%、血管断面積における新生内膜の占める面積比)は、A群9.26±1.39(SEM)、B群12.6±1.71、C群21.3±3.04であり、A-C群、B-C群において有意差を示した(P<0.05)。C群ではグラフトの織り込まれた繊維内にα平滑筋アクチン陽性細胞を多数認め、この細胞数はA,B群と比し有意に多かった。【結論】bFGFの徐放により新生内膜形成及びグラフト繊維内へのα平滑筋アクチン陽性細胞の侵入が促進されることが示唆され、宿主動脈壁と人工血管膜との間に強固な固着が生じることが期待できると思われた。現在は、ステントグラフト自体の大動脈壁に対する適合性を高める研究を進めており、今後適合性に優れたステントグラフトに本研究の結果を応用し、より積極的な大動脈ステントグラフト治療の臨床応用が実現化できれば、大動脈疾患に対する低侵襲治療として遠隔成績が期待され、外科手術治療に対する高危険群患者にとって朗報になりうると考えられる。
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