研究概要 |
血管障害の病期評価・治療適用・治療効果判定は、脳血流・代謝の定量測定を行い、その結果に基づき循環代謝機能を評価し、主に大脳半球レベルでの大きな障害の有無や予後の予測に役立ててきた。しかし、慢性虚血性変化においては、局所微小循環にも注目し、より詳細な循環代謝の変化に注意する必要がある。本研究では、MRIやCTを用いた血流代謝測定の定量的応用を考慮し、臨床用あるいは動物用PETを用いて微小循環の詳細を検討している。 まず、従来法における検査の煩雑さを改善し、簡便法による循環代謝計測法を新たに確立して報告した(J Nucl Med,2006;Eur J Necl Men Mol Biol,2007)。さらに、細動脈・毛細血管・細静脈の血液量を割合計測する基礎実験および解析モデルを確立し、脳血流量、酸素代謝、脳内灌流圧、平均通過時間等との関係を検討した。近年MRIを用いた血流測定法などにおいて、平均通過時間と血流代謝の相関が検討されているが、我々が同じ患者でPET・MRIの計測を行った検討では、MRIでの平均通過時間延長はやや過大評価の傾向にあり、PETで得られたトレーサー到達時間と比較すると、酸素摂取率との関連性はやや劣ると考えられる。また、トレーサー到達時間の違いを正確に補正した脳血流・微小循環血液量の定量値は、従来の方法と有意な差はないものの、より正確な生理指標と考えられ、それらを用いた脳内灌流圧計測の精度を向上させるのに役立っている。これらの結果は、来年度脳循環代謝学会等で発表する予定である。動物(ラット)を用いた基礎実験では、内頸動脈から塞栓用の糸を挿入する中大脳動脈閉塞モデルおよび糸を抜く再灌流モデルにおいて、動物用PETを用いて病変部の血流代謝の変化を術後の経過と共に計測し、急性期〜亜急性期における病態や自動調節能の変化を検討している。
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