64列マルチスライスCTが2006年度に名古屋大学附属病院に導入されたことをうけて、胆膵領域の多相造影CTを施行する場合の最適な撮影条件を決定する目的で、肝胆膵領域を検出器厚0.5mmで7-8秒以内に撮影できる様々な撮影条件が、ノイズ、低コントラスト分解能、半値幅、MPR(multiplanar reformatted)像の画質に及ぼす影響を各条件の線量を同一にして評価した。撮影条件におけるノイズ、低コントラスト分解能に差を認めなかったが、半値幅、MPR像の画質はガントリ回転時間0.5秒に比べて0.6-0.75秒を用いた方が良好であることを明らかにした。 16列マルチスライスCTで胆膵領域の多相造影CTを施行した画像の造影効果を評価して、60歳以上の患者において約10%造影剤量を減量しても60歳未満の患者と比べて造影効果に差がなく、かつ、同量の造影剤量を投与した場合に膵実質造影効果が過剰であると評価される症例が増えることを明らかにし、高齢者で造影剤を軽減できることを示した。 16列マルチスライスCTで検出器厚0.5mm or 1mmを用いて胆膵領域の多相造影CTを施行して得たvolume dataから50%オーバーラップさせた1mm厚画像を再構成し、この再構成画像から作成される高分解能の多断面MPR画像の有用性を検討した。多断面MPR画像と水平断像を用いて主膵管と胆管のwater densityを呈する部分が膵実質内で合流しているか否かを評価することにより膵胆管合流異常の診断が可能であることを明らかにした。また、主膵管に沿った多断面のcurved MPR画像を併用することによって、水平断像単独の評価に比べて主膵管の描出能と切除可能であった膵管癌の診断能が有意に改善することを多数の読影者を用いた読影実験によって明らかにした。
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