研究概要 |
肝細胞癌における分化度は予後を規定する重要な因子とされており、特に肝癌の生体肝移植においては低分化型肝癌の症例の予後は有意に悪いと報告されている。従って、肝癌の分化度を術前に推定することは非常に重要である。 一方、近年MRIでの拡散強調画像と肝癌の分化度が相関するという学会報告が散見される。また、近年3Tという超高磁場のMRIが本院でも使用可能となった。そこで、我々は3T MRIの拡散強調画像と肝癌の分化度が相関するかをprospectiveに検討した。対象は2007.5.11から2008.3.20の間、肝癌に対して肝切除ないし生体肝移植を施行された52名(男性31名、女性21名),年齢は46歳〜76歳(平均57.3歳)である。MRIの拡散強調画像はEPIをbaseとして、呼吸同期下に施行し、parameterはTE=71,b=0,500,1000,SENSE(turbo factor=2)で撮像した。3名の放射線科医が拡散強調画像の信号強度を5段階に視覚的に評価し、病理標本は1名の肝臓のpathologistが高、中、低の3段階評価を施行した。尚、上腹部のADC値は現時点では依然信頼性に問題があると判断し、今回の検討からは除外した。統計学的にはSpearman rank correlationで解析し、その結果、r=0.634,p<0.001と比較的強い相関を認めた。 以上の結果からMRIの拡散強調画像は肝癌の分化度推定に有用であり、今後、肝癌における生体肝移植の適応にも影響を及ぼし得る有用な検査法と考えられた。
|