当該年度も慢性難治性の疼痛疾患患者(骨転移症例含め)20例の脳局所血流とブドウ糖代謝のSPECTおよびPET画像データを収集し、その局所数値を標準化された比較対象群の局所数値と統計検定する準備を開始した。脳自身が血流豊富かつブドウ糖代謝のきわめて盛んな臓器であり、難治疼痛群に見られる僅かな血流・ブドウ糖代謝変化を検出することが困難な例が多い。現時点まででは単なる糖代謝や血流の変化が統計学的に有意なものか、症例固有の非特異的な微小変化を確実に分類できてはいない。慢性疼痛発生からの時間的経過による局所脳血流低下は、ある程度確認できるが、ブドウ糖代謝との間に一定の関連性がまだ見出せておらず、これを解決すべく、脳血流データで研究対象群と対照となる比較群の画像データの有意差を検出する画像解析ソフトを修正し、ブドウ糖代謝データにも応用可能なようにした後に、解析パラメータを増設して再解析を進める方向で研究を継続する予定である。同時に、慢性疼痛疾患はしばしば抑鬱状態を併発するが、抑鬱と前頭葉機能の関連が推定される。この点に関して、疼痛改善群の改善前後の脳血流・脳糖代謝の変化にはわずかながら関連性が見いだせている。疼痛改善と抑鬱の程度の改善とが、脳機能の上である程度の有意な相関関係を示すか否かを、同様に上記の改訂検定ソフトを用いて今後詳細に分析する予定である。現時点では、疼痛と神経精神面での関連で、脳機能での確認可能な事象は上記しかないが、抑鬱以外に注意集中・意欲などの高次機能も含めて解析を継続したい。
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