研究期間を通して慢性疼痛疾患患者(骨転移症例含め)30例の脳局所血流とブドウ糖代謝のSPECT.およびPETの定量データから、それぞれの局所数値を標準化した比較対象群の脳(標準脳)での局所数値と統計検定を行った。脳自身が血流豊富かつブドウ糖代謝のきわめて盛んな臓器であり、難治疼痛群に見られる僅かな血流・ブドウ糖代謝変化を検出することが困難な例が多く、このため現時点では、糖代謝や血流の変化が統計学的に有意なものか、それとも症例固有の非特異的な微小変化なのかを確実に分類することが難しい状況である。慢性疼痛発生からの時間的経過による局所脳血流低下は確認できたが、血流とブドウ糖代謝との間に一定の関連性がまだ見出せない。したがって、これを解決すべく、脳血流データで研究対象群と対照となる比較群の画像データの有意差を検出する画像解析ソフトを修正し、ブドウ糖代謝データにも応用可能なようにした後に、解析パラメータを増設して再解析を進める方向で研究を継続している。同時に、慢性疼痛疾患はしばしば抑鬱状態を併発するが、抑鬱と前頭葉機能の関連が推定される。この点に関して、疼痛改善群の改善前後の脳血流・脳糖代謝の変化にはわずかながら関連性が見いだせた。疼痛改善と抑鬱程度の改善とが、脳機能の上で有意な関係を示すか否かを、同様に上記の改訂検定ソフトを用いて今後詳細に分析する予定としている。現時点では、疼痛と神経精神面での関連で、脳機能での確認可能な事象は上記しかないが、抑鬱以外に注意集中・意欲などの高次機能も含めて解析を継続する計画である。
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