研究課題/領域番号 |
18591351
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉浦 敬 九州大学, 大学病院, 講師 (40322747)
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研究分担者 |
熊澤 誠志 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (50363354)
樋渡 昭雄 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (30444855)
本田 浩 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (90145433)
有村 秀孝 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (20287353)
門司 晃 九州大学, 大学病院, 講師 (00294942)
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キーワード | 脳 / MRI / 神経回路 / 拡散テンソル / 白質路 / 大脳皮質 |
研究概要 |
昨年度に開発した、拡散テンソル画像に基づいて皮質下白質の微小構造の変化を皮質領域ごとに定量的に解析する方法を使って、正常な脳の皮質下白質の微小構造に、部位によるvariationが見られるか否かにつき、検討した。対象は、44名の健常成人。78の異なる皮質領域において、皮質下白質のmean diffusivity(MD)の平均値を測定し、左右大脳半球内、および左右大脳半球の対応する皮質領域間での比較を行った。その結果、両側において、中心前回はその他の領域に比べ低いのを、頭頂葉ではその他の領域に比べ高いMDを示すことが分かった。また、左右半球間での比較では、頭頂葉、中後頭回、前頭葉の眼窩面や内側面で、左側が右側に対し有意に低いMDを示し、反対に、前頭弁蓋部、補足運動野、側頭葉、辺縁系、楔部および楔前部では、右側が左側に対し有意に低いMDを示すことが分かった。この生理的なvariationは、神経軸索や髄鞘の密度と関連している可能性が考えられた。同じ解析法をAlzheimer病(AD)患者と健常者に適用し、(1)ADにおいて特異的な空間分布を持つ、皮質下白質の微小構造の異常がみられるか否か、および(2)この皮質下白質の微小構造の異常がADの診断に利用できるか否か、について検討した。対象は33名のAD患者と28名の高齢健常者。解析の結果、ADでは、29皮質領域で皮質下白質のMDの有意な増加をみとめた。この皮質下白質のMDにもとづき、健常者とAlzheimer病の判別を行ったところ、単一の領域(左中後頭回)のMD値に基づいた場合、88.5%の正確度で両群を判別できた。複数の領域のMD値を組み合わせた場合、正確度は96.7%と改善した。以上から、ADにおいて特異的な空間分布を持つ皮質下白質の微小構造の異常がみられ、それは診断に利用できることが示唆された。
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