研究概要 |
18年度末までにポジトロントレーサーである[C11]CGP-12177の合成に成功し、光学異性体の分離にも成功した。本年度は昨年に引き続き臨床応用を行い、健常者7例、陳旧性心筋梗塞患者14例にPET検査を施行した。健常成人群における左室中央部体軸断面全体における心筋交感神経β受容体密度の平均値は8,9±3.0pmol/mLであった。一方、陳旧性心筋梗塞患者群における同断面全体のβ受容体密度は6.0±1.5pmol/mLであり、有意に健常成人群よりも低値であった。また陳旧性心筋梗塞群中では、心筋梗塞部が対側健常部に比してβ受容体密度が有意に低値であった(4.8±1.5vs6.7±1.3pmol/mL,P<0.01)。さらに、心筋梗塞群の対側健常部と健常者群対応部のβ受容体密度を比較すると、梗塞患者の梗塞対側部で有意に低値であった(6.6±1.3vs10.3±3.7pmol/ml)。これらの結果よう、心筋梗塞後心において、心筋梗塞部はもとより対側健常部においても心筋交感神経β受容体密度が健常心に比べ有意に低下していることが判明した。この結果と我々の今までの研究成果を考え合わせるとき、交感神経β受容体密度の低下を一因とする心筋酸素代謝の低下が、体側健常部心筋の収縮能障害を引き起こすのではないかと推察された。梗塞後心での心不全発症のメカニズムの一端にせまる結果が得られた。
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