骨粗鬆症では骨折のリスク評価に有限要素解析によるシミュレーションが確立しており、高分解能マイクロCTにて海綿骨の骨梁構造を正確に表現し、骨質を評価する試みもなされている。しかし広範囲の撮影が必要な担癌症例では困難である。骨折という現象については力学的な解析に基づく必要があり、かつ、三次元的な解析が必要である。性状が様々なために骨折評価に対する解析方法が確立していない転移骨に対する実用可能な解析法を確立することをまず目指した。 研究初年度に脊椎の骨転移に対する放射線治療依頼があり、その後の著しい病状の進行がなく経過観察が可能で追跡のCT検査が行えた、骨転移パターンの異なる4症例を検討対象とした。臨床用X線CT画像から骨の有限要素モデルを作成し、画像処理と力学解析を統合的に行えるソフトウェアのMECHANICAL FINDER(R)を使用した。得られた画像より椎体部分のみを抽出し、メッシュ基準サイズを2mmとして外形データを生成し、四面体ソリッド要素を自動生成した。解析条件として椎体底面を完全拘束し、荷重範囲は椎体上面に一様として体軸方向に垂直荷重した。弾性解析では600Nの負荷を行い、非線形骨折線予測解では1000Nの負荷を行った。 骨硬化性骨転移ではいずれの解析でも骨折の発生を予測させる結果は得られなかった。溶骨性骨転移では骨折の発生が予測された。予測部位は必ずしも骨転移巣の近傍ではなく、骨転移の形状や存在位置が影響していると思われた。有限要素法は骨転移においても個別に骨折を予測する解析方法として有用である。
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