研究概要 |
本研究では、わが国のCT診断の現状を全国調査によって把握し、CT診断件数の推定法について検討した。この結果、CT診断件数は、施設の病床数と件数に相関関係が推定され、施設の規模別による全国CT診断件数推定式を算出した。その推定式に公表されている施設の病床数を調査し、乗じることによって実態予測がおこなえることが確認された.2005年のわが国のCT診断件数は約27,000,000件と推定された.臓器線量に影響する年齢別・部位別は全体に占める割合を推定することで把握可能である.小児CT診断件数の推定には、全国CT診断件数の推定値に調査結果における小児の件数割合を乗じることで実態予測可能であると確認された.本研究結果においては、2005年の小児CT診断件数は約78,000件と推定された. 線量計算法は既成のプログラムを利用しながら、個々のケースで線量を推定する方法について検討した。計算値を実験測定によって検証したところ、3社6機種では、肺、肝臓、腎臓および大腸などで実測値に比べて推定値が平均で約20%高い値を示し、推定値は過大評価になりやすい傾向が明らかとなった。これを改善するためには日本人体型のボクセルファントムによる線量推定法の開発が急務であることがわかった。 線量だけでは放射線リスクの全体の把握につながらないために、CT診断件数と個々の線量の分布を推定するためのシステムを用いて、がん罹患数を推定するシステムを構築した。従来のリスク評価では、計算された数値の解釈がされないために、数値の受け止め方に誤解が生じやすい問題があった。リスク評価では実際に行っている診断件数と線量が有意な健康影響をもたらす可能性を検討できるシステムが求められている。本研究で構築したリスクを推定する方法は、将来の小児コホート調査研究に必要性を検討する際に利用できるツールとなるものと期待される。
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